注文住宅でZEH仕様を取り入れよう

ZEHとは何かをやさしく解説。断熱等級・一次エネルギー消費量との関係を整理する

家づくりを進めていると、ZEH(ゼッチ)という言葉に必ず出会います。説明を聞くと「エネルギー収支をゼロにする家」と返ってくるのですが、何をどう足し引きしてゼロなのかが分からないまま、言葉だけが先に進んでいくことが多いように思います。

さらに打ち合わせが進むと、断熱等級、一次エネルギー消費量、UA値といった言葉が次々に出てきます。これらは別々の話に見えて、実はすべてZEHという一つの考え方の中でつながっています。

この記事では、それぞれの言葉が住まいのどの部分を指しているのかを、順番に整理していきます。数字を覚える必要はありません。何と何を比べている言葉なのかが分かれば、提案された仕様が何を狙ったものかを読み取れるようになります。

ZEHは「引き算」で考える

ZEHは Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)の略です。日本語にすると「正味でエネルギーがゼロの家」。この「正味」という言葉が要点です。

エネルギーをまったく使わない家という意味ではありません。使う量と、自分の家でつくる量を差し引きして、結果としてゼロに近づけるという考え方です。

つまりZEHは、次の3つの足し算と引き算でできています。

  • 断熱…熱を逃がさない。そもそも冷暖房を必要としにくい状態にする
  • 省エネ…使う設備そのものの消費を減らす
  • 創エネ…太陽光発電などで、自分の家でエネルギーをつくる

この順番には意味があります。先に使う量を減らしておかないと、つくる量だけが大きくなり、設備に頼った家になってしまうためです。

なぜ断熱が先に来るのか

穴のあいたバケツに水を注ぎ続ける状況を想像すると分かりやすいと思います。注ぐ量を増やすより、穴をふさぐほうが確実です。

家で言えば、穴にあたるのが断熱の弱い部分、注ぐ水にあたるのが冷暖房です。断熱を後回しにしたまま発電だけを増やしても、暖房が効きにくい家であることは変わりません。光熱費の帳尻は合っても、住み心地は別問題として残ります。

逆に言えば、断熱と省エネを先に固めておけば、最後の創エネはそれほど大きな設備を必要としません。太陽光発電がどういうしくみで、どこまでをまかなえるものなのかを押さえておくと、収支のうち「つくる側」にどれだけ期待してよいかの見当がつきます。

一次エネルギー消費量という言葉

ZEHの判定で使われるのが、一次エネルギー消費量という指標です。聞き慣れない言葉ですが、意味は単純です。

「一次」とは何を指すのか

家庭で使う電気やガスは、それ自体が自然にあるものではありません。電気であれば、発電所で石油や天然ガスを燃やしたり、自然のエネルギーを利用したりしてつくられ、送電線を通って届きます。この、もとになった燃料やエネルギーのことを一次エネルギーと呼びます。

なぜわざわざ一次に戻すかというと、電気とガスと灯油を同じ土俵で比べるためです。使う場所での単位がばらばらだと合計できません。すべてをもとのエネルギーに換算し直すことで、家全体の消費をひとつの数字にまとめられます。

何と比べているのか

一次エネルギー消費量は、単体の数字を見ても意味が分かりません。比較のしかたはこうです。

  • 基準となる消費量…一般的な仕様で建てた場合、その家がどれくらい使うか
  • 設計した消費量…実際に計画している仕様で、どれくらい使うか

この二つを比べて、設計のほうがどれだけ下回っているかを見ます。「◯%削減」という言い方をするとき、比べている相手はこの基準となる消費量です。

ここで対象になるのは、冷暖房・換気・給湯・照明といった、建物に備え付けられている設備です。テレビや冷蔵庫のような、住む人が後から持ち込む家電は含まれません。家電の使い方で結果が変わってしまっては、建物の性能を比べられないためです。

断熱等級とUA値

断熱の性能を表すときに出てくるのが、断熱等級という言葉と、UA値という数字です。

UA値は「逃げやすさ」

UA値は外皮平均熱貫流率といい、家全体から熱がどれくらい逃げやすいかを表します。屋根・壁・床・窓といった、外と接している部分すべてをならして計算したものです。

注意したいのは、UA値は地域によって求められる水準が違うという点です。寒い地域と温暖な地域では、必要な断熱の厚みが当然変わります。他の地域の数字をそのまま持ってきて比べても意味がありません。

等級は段階を表す目安

断熱等級は、このUA値などをもとに、断熱の水準を段階で表したものです。数字が大きいほど高い水準を示します。

ただし等級は、あくまで断熱の話です。設備の省エネ性能や発電は含まれません。ZEHを名乗るには、断熱の等級を満たしたうえで、省エネと創エネまで含めた収支を見る必要があります。等級が高い家がそのままZEHというわけではない、ということです。

似た言葉との違いを整理する

混同しやすい言葉を並べて比べてみます。

  • 省エネ住宅…使うエネルギーを減らすことに重点を置いた住まい。つくる側の話は必ずしも入らない
  • ZEH…減らしたうえで、つくる分まで含めて収支を見る
  • 長期優良住宅…断熱だけでなく、耐震性や劣化対策、維持管理のしやすさまで含めて、長く使えることを見る

見ている範囲が違う、と考えると整理しやすいと思います。ZEHはエネルギーの収支を見る言葉、長期優良住宅は建物の寿命を見る言葉です。どちらが上ということではなく、別の角度からの評価です。

「ZEH水準」という言い方

説明の中で「ZEH水準」という言葉が出てくることがあります。これは、ZEHと同じくらいの断熱・省エネの性能を満たしている、という意味合いで使われます。発電設備まで載せているかどうかは、この言い方だけでは分かりません。

ZEHなのか、ZEH水準なのか。似て見えますが指している範囲が違うので、提案を受けたときに確認しておくとよい部分です。

数字で見落とされやすいこと

ここまで指標の話をしてきましたが、数字だけでは分からない部分もあります。計算はあくまで標準的な住まい方を前提にしているという点です。在宅時間や家族構成、どの部屋をどれだけ暖めるかによって、実際の消費は当然変わります。計算上の数字は、同じ条件で比べるための物差しであって、その家の光熱費の予言ではありません。

まとめ:言葉の関係をひとつにつなげる

整理すると、こうなります。断熱等級とUA値は「逃がさない力」、一次エネルギー消費量は「使う量を同じ物差しで測ったもの」、ZEHはそこに「つくる量」を足して収支で見る考え方。別々の言葉に見えて、どれもエネルギーの出入りを違う角度から見ているだけです。

そしてこの考え方を突き詰めていくと、最後に残るのは数字ではなく、その家で過ごす時間が心地よいかどうかという一点です。一年を通して快適に暮らせる住まいがどう作られているのかという部分を先に知っておくと、提示された等級や削減率が何のための数字なのかが見えてきます。

そのうえで、カタログの数値だけでは体感までは分かりません。冬の朝に実際の住まいを見せてもらう、足元の温度を確かめる、聞いてみる。それが、自分の家にどこまでの性能が必要かを決める、いちばん確実な方法だと思います。